ポラロイドカメラ
「今の自分を残しておきたい、好きな相手の姿が欲しい。そう思われる方も多いでしょう!」
その通販番組はそんな文句で始まった。
「そんなあなたにオススメなのが、このドッペルゲンガーポラロイドカメラ!」
「このカメラには一枚しかフィルムは入っていません!ですが、このカメラで対象を写すとあら不思議!その姿が一瞬にして目の前に現われます!ちょっと○×さんを写してみましょうか!」
パシャリ。すると、SFのように○×さんがもう1人現われた。
観客のへぇ〜!、という声があがった。
「まるで生きているよう!ほら、○×さん触ってみてください!本物のようでしょう!?」
「本当、私です!すごいですねー!」
その商品も気になったが、出演者の常にビックリマーク付きの喋り方も気になった。
「これに意思はありませんが、自分の意のままに動かすことが出来ます!付属のマイクで話しかけると、その動作をしてくれるんです!」
出演者は○×さんのドッペルゲンガーに拍手をしろ、と命令した。
ドッペルゲンガーは拍手をした。
また、観客のへぇ〜!、という声があがった。
「うわぁすごい!拍手しましたよー!」
まるでドラ○もんの道具だ。
「今ならこれにお手入れ用のセットもお付けして、お値段たったの――――円です!」
「えー!本当ですか!?それは安い!皆さんすぐに電話してください!」
言われた通り、俺はすぐに電話した。
この『ドッペルゲンガーポラロイドカメラ』は瞬く間に全国に広まり、社会現象を引き起こした。
だが数ヶ月後、そのドッペルゲンガー達は本人になり代わるようになった。
意思は無いと言われていたが、どうやら持ち始めたらしい。
それは社会問題になった。
俺は発売されてすぐに買ったものの、未だ使っていなかった。
はじめはグラビアのアイドルでも写そうと思ったのだが、もし雑誌のドッペルゲンガーが出てきたらフィルムがもったいないし、かといって好きな女もいなかったし自分を写す程ナルシストでもなかったからだ。
その夜、俺のドッペルゲンガーが家を訪ねてきた。
誰かが俺を写したのだろう。
当然、俺になり代わろうとしているようだ。
冗談じゃない。
対抗するために何かいい案はないかと考え、俺のドッペルゲンガーを『ドッペルゲンガーポラロイドカメラ』で写してみた。
見事に今、部屋に俺が3人いる。
俺のドッペルゲンガーのドッペルゲンガーは俺のドッペルゲンガーになり代わろうとした。
とりあえずケンカは他所でやれと俺のドッペルゲンガーと俺のドッペルゲンガーのドッペルゲンガーを家から追い出した。
数日後、俺は何事も無く日々を過ごしていた。
おそらく、俺のドッペルゲンガーのドッペルゲンガーは俺のドッペルゲンガーになり代わって悠々自適に日々を過ごしているんだろう。
良いことだ。
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ややこしい。
2003.8.7