ひとでなしの恋
あいつは度々うちを訪れては俺を誘った。
あいつが自分を抱けと言った時、正直驚いた。
冗談だと思っていたら、本気だったらしい。
俺はそんなにまいっているように見えたのか、と自嘲した。
が、俺は確かに自分で思っているよりもまいっていたらしく、容易に誘いに乗った。
そういう関係だと割り切ればいい。
その時の行為の後、血を見たのにはひどい自己嫌悪に見舞われたけれど。
心配要らない。
その言葉に、笑顔に、俺は随分甘えた。
癒された。
何か返そうとしたけれど、何も要らない、とつっぱねられた。
だから、帰りの交通費だけ俺が払った。
その内俺はあいつが側にいるだけでほっとするようになった。
俺は、あいつが好きなのだ。
キスをしたい、帰したくない。
俺の側で本を読んでくれているだけでいい。
あいつに自己犠牲をさせている俺が、どんな顔をしてそれを言えるのか。
好きだ。
それが言えれば、何か変わるか。
言って、この関係が無くなるのが恐い。
あいつに触れられる機会が無くなるのは、心も身体も拒否した。
好きだよ。
でも、
俺は、
俺は
ひとでなしだ。
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トランキライザーと対です。
2004.2.22